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いつものように暮らすこと

【音響のコツ】マイクの定番「SHURE SM58」を音響の現場でうまく活用する話

この記事は以前のブログで書いた内容を加筆修正したものです。

 

■はじめに

 

初めまして、荒木若干と申します。

普段は主夫をしつつパートに出かけたり、漫画や音楽のライターとして活動している者です。

 

私は以前、地元の会社で音響担当として約7年ほど働いていました。

プロアマ問わず、というよりも来る者拒まずな会社でしたので、非常に幅広いジャンルの現場に出向きました。

イベント企画から関わるような仕事、演歌歌手のコンサート、バンドのライブ、夏祭り、カラオケ大会、結婚式、役所行事、避難訓練、小学校の運動会などなどなどなど。

本当にたくさんの経験させてもらったので、今の音楽ライターとしての仕事があるのだと思っています。

 

さて今回、そういう音響を通して得た知識、というか小技裏技、つまり「音響のコツ」みたいなものを、みなさんにご紹介します。

 

正直、私は音楽系の学校で勉強してから音響マンになった訳ではないので、専門知識についてはかなり疎いです。なので周波数特性がどうとか、ディレイタイムはどうとかの話は出来ません。期待していた方はすみません。

 

そういう話ではなく、ほんと、ちょっとした音響テクニックについて。

いやテクニックというほどでもなく、それをどう表現したらいいか難しいんですが、じっくり考えてみるとやっぱり「コツ」という言葉に落ち着きます。

 

「今度初めて野外で音響やるけど、なんかうまいことやる方法ないかなぁ」という情報をお探しの方向けです。

ネットって、レコーディングやDTMの情報はけっこう出てくるんですが、現場でやる音響のハウトゥー記事とかって少なめなんですよね。1日で見終わってしまうぐらい。

この話が、少しでも誰かの助けになれれば幸いです。

 

■音響マイクのド定番「SM58」について

 

タイトルにもなっていますが、これからSM58というマイクについて書かせていただきます。

 

マイク、と一口に言ってもとんでもない数があります。

サウンドハウスサイト内のマイクカテゴリーを開いてみると、ざっくりですが約2500種類ほど販売されているようです。すごい数。

しかし、音響で使われるマイク、といえばその数はグッと絞られます。

そしてその中でも特に有名、定番、世界共通の1本、それがSHURESM58です。

 

音響会社の倉庫、レコーディングスタジオ、リハーサルスタジオ、ライブハウスなど、音楽関係の場所に行けばどこにでもあります。間違いなくあります。少なくとも私は「うちにはないです」という話を聞いたことがありません。ない場合はマイクについてめちゃくちゃこだわりがあるんだと思います。

 

業界用語で「ゴッパ」「ゴッパチ」「ゴーハチ」などと呼ばれます。音響をこれからやってみようと思っている方は会話の中で「ボーカルマイクはゴッパーで…」とか登場させてみましょう。手軽に音響マンの気分が味わえますよ。

 

その特徴は何と言っても頑丈さ。ちょっと落としてしまった、ぐらいでは壊れません。メンテナンスのしやすさも魅力の一つです。マイクには人の唾が飛ぶので、使っているうちに臭くなるんですよね…。そういう時はマイクの頭、グリルと呼ばれる部分を取り外して洗えば解決。

 

値段は約一万円ほど。輸入品なのが理由か、時期によって安くなったり高くなったりします。

ちなみにSM58と並んでSM57というマイクも定番です。同じメーカーSHUREの出しているやつですね。呼び方は「ゴーナナ」。SM58のグリルがないバージョン、という感じです。SM58はボーカル用、SM57は楽器集音用として使用される機会が多いです。

 

■マイクにはスイッチなしとスイッチ付きがある

 

ここで少し話が逸れますが、普通、音響で使われるマイクはスイッチ付きではないことが多いです。

なぜか?

それは音が出ないトラブルを避けるため。

 

例えば、学校の集会で校長先生がマイクの前に立ち、一礼して喋り始めた…というタイミングで、スピーカーから声が出ていない、そんな場面に遭遇したことありませんか?校長先生が苦笑いしながらマイクのスイッチをオンにしたりして。

そうです。マイク自体にスイッチがあると、こういうことが起こりやすいのです。

直前までマイクを使っていた人がスイッチを切って、それに気付かず、そのまま次の人が喋り出す。だから声を拾ってくれない。

 

一般の方がマイクに一番触るのって、カラオケだと思うんです。

カラオケのマイクってスイッチありますよね。そして自分が歌い終わったらスイッチ切りますよね。

多分みなさん、それがクセになっているのだと思います。マイクのスイッチは使い終わったら切るもの。

 

これが学校の集会やカラオケだったらまだいいですが、大好きなアーティストのライブの、最初の曲の歌い出しでそうだったら、どうでしょうか。がっかりしてしまいませんか?せっかく期待して待っていたのに。吉本新喜劇ばりにズッコケそう。

 

そういう音が出ないトラブルを避けるため、スイッチなしのマイクが使用されるのです。

なので音響をやっていると、スイッチないのに、マイクのスイッチを切ろうとしている人に出会うことも。なんだか微笑ましい気持ちになります。ちゃんと伝えるべきでしたね、すみません。ミキサーでオンオフができるんです。

 

SM58スイッチ付きの利点について

 

さて、SM58は2種類あって、スイッチ付きとスイッチなしが販売されています。

そして上記した通り、普通の音響ではスイッチなしが使用されます。

しかし私が音響をやっている頃は、スイッチ付きのSM58を使っていました。

その理由が、主題である「音響のコツ」に繋がります。

 

私はよく1人で現場に出向いていました。会社の事情で、音響の仕事になかなか人手が避けなかったのです。

搬入から撤収まで、そのイベントの音響全てを1人でこなすことも。音響自体は面白いし好きだから良かったのですが、体力的にはけっこう大変なんです。

外食チェーン店でのワンオペ問題を想像してもらえば、なんとなく分かっていただけるのではないでしょうか。

 

音響の現場ではステージと機材が置いてある音響ブースがあり、私はそのブースに1人陣取るわけです。

そこでミキサーなどを操作するのですが、さて1人で音響をやると一番大変なのが、トイレ。

本番中にトイレに行きたくなると、それはもう悲惨です。

ブースを離れる訳には行かず、もじもじしながらなんとか本番をこなします。

そして少しだけある休憩時間や転換のタイミングで、トイレに走ります。ダッシュです。全力です。

 

ただ私が席を離れた際、ちょっとこの時間でアナウンスしたいことがある、となった場合、私がミキサーでマイクをオフにしていたら、どうなるでしょうか。

ミキサーという機械は見た目からしてややこしいです。こんなに必要か?というぐらいにツマミがあります。アナログミキサーならまだしも、それがデジタルミキサーになればなおさら。

なので全く知らない人なら、まず触れません。

ということで音が出せません。困ります。

 

そういう時のスイッチ付きです。

ミキサーでは常にマイクをオン。音を切るかどうかはマイク側のスイッチで。

自分が席を立つ時は、その現場の担当者の方に「ちょっと席離れますんで、何か喋ることあればマイクのスイッチ入れてくださいね」と伝えます。

「ミキサーのこのボタンを押して…」と言うよりも断然分かりやすいはずです。

 

このように、場合によってはスイッチ付きのマイクが便利なのです。

紹介の仕方がかなり限定的になりましたが。

 

SM58スイッチ付きの便利機能

 

ここでSM58スイッチ付きの便利な機能について。

 

これまで、音響のマイクは基本スイッチなしのものが使われる、私は特別にスイッチ付きを使っていた、という風な話をしてきました。

ですが、私にだってスイッチなしが使いたい時もありました。

しかしそういう時、スイッチ付きのマイクを無理やり使って、何かの拍子に誰かがちょっとマイクにぶつかって、スイッチが切れてしまう可能性、大いにあります。

 

さて、それを人のせいにするのは音響マンの恥。

そうならないよう、対策を講じる必要性が出てきます。

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はい、こちら。SM58スイッチ付きです。初めましてこんにちは。

胴体部分にスイッチが見えますね。これの上げ下げがオンオフです。

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便利機能とはこちら。指で触っている長方形の部分です。

これはそのままこの形の金属プレートで、ネジで固定されています。

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ドライバーで簡単に取り外し可能。

そしてよく見ていただくと分かりますが、このプレート、ネジ穴が中心にありません。

穴の上下が非対称の幅なんですね。これがキモです。

 

最初の状態だとスイッチは当然、上下に動きます。

しかしこのプレートを外し、上下を逆さまにして取り付ける。

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すると、プレートがストッパーになって、スイッチをオンの状態で固定出来るのです。

こうすればスイッチがオフになることはありません。

簡易的なSM58スイッチなしの出来上がりです。

 

■おわりに

 

SM58のスイッチ付き、スイッチなしの値段は、実は同じ。

そしてスイッチ付きは、スイッチなしの状態に出来る。

あれ…なんだか…スイッチ付きの方が良い気がしてきませんか…?

スイッチ付きの方が好きになってきませんか…?私はスイッチ付きの方が好きなんですがどうですか…?仲良くしませんか…?

 

さあ、催眠術師みたいなノリは置いておいて、今回の記事はこれで以上です。

音響のコツについてはもう少し引き出しがありますので、また次の機会に書かせていただければと思います。

私の話が少しでも、あなたの役に立てていれば、嬉しい限りです。

 

この記事は株式会社サウンドハウスさんに寄稿しました。

www.soundhouse.co.jp